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今のマンションに足りないもの
リノベーションとは新しい付加価値をつけて再生させること
リノベーションとは、わかりやすくいうと、「ある思想」に基づいて住空間をデザインし直し、新たな価値を生み出すことです。補修工事をするのは「リフォーム」と同じですが、単に建物を元に戻すのではなく、新しい付加価値をつけて再生させることです。
「ある思想」とは住む人の立場で住空間を見直し、個人のライフスタイルに合わせて機能的で遊びのある楽しい空間を提供するという考え方で、いわば「リノベーション」とは「マンションの注文建築」だと考えてよいでしょう。
具体的には、マンションの空間をいったんスケルトン状態(構造が丸出しの状態)に戻し、水回りの移動や配管工事、間仕切りの変更、構造補強、外壁の模様替えなどを行ないます。
家族構成に合わせて間取りを設計し直すばかりでなく、場合によっては事務所用途から居住用に、あるいはその反対に用途を変更することもあります。
消費者のニーズは多様化しているからこそ画一化された間取りは敬遠される傾向にある
戦後の日本は、高度成長期から安定成長期、バブル、そしてバブル崩壊を経て今日に至っています。高度成長期には「テレビ、洗濯機、冷蔵庫」が、安定成長期には「カラーテレビ、カー、クーラー」が「三種の神器」といわれたように、みんなが同じものを欲した時代がありました。
そうしたものをほとんどの人が手に入れた今日、欲しいものはますます多様化しています。それは住空間にも当てはまります。
ところが、この住空間に関しては注文住宅なら別ですが、マンションに関しては新築であれ、中古であれほとんどLDK代表されるような画一的な間取りが主流でした。
いまのようにライフスタイルや個人の嗜好が多様化している時代に、住空間だけは相変わらず隣の間取りと同じというのは、住む人のニーズを満たしていないことになります。
しかし、多くの日本人は、前述したような新築信仰が根強くあるために、画一化された間取りになんら疑問を感じていません。でも、本当に新築のマンションを購入したというだけで満足でしょうか。
画一化の間取りをリノベーションによって生まれ変える
私たち事業部に寄せられた例ですが、ある夫婦、子供が独立し二人だけの生活となりました。それで、マンションをリノベーションしたいという相談でした。
そのご夫婦の要望は、部屋の中に川を造ることはできないかということでした。高級料亭などで川が流れている空間を造って癒しを演出しているところがありますが、それを自分のマンションで実現させたいというものでした。
床に防水加工を施し、水道水を還流させるようにすればマンションの室内でも川の流れを実現することができます。もちろんマンションですから、区分所有といっても完全に自分たちのやりたいようにリノベーションできるとは限りません。
どんな規約があるのかきちんと調べた上で、リノベーションに取り掛かりましたが、そうしたニーズもあるのです。
また、私たちが扱った例ではありませんが、ゴルフが趣味というご夫婦は、マンションの室内にミニゴルフ場のようなものをつくりたいという要望があったそうです。砂を敷いてバンカーをつくって、可能なら天然芝も敷きたいというのが、そのお客様の希望でした。
天然芝に関しては、日光や湿度などの問題もありますから、川を造りたいという要望より実現するのは難しいのですが、まったく不可能ではありません。ただ、メンテナンスなどを考えれば人工芝のほうがいいというアドバイスをして、室内にミニゴルフ場をつくったということです。
これはちょっと極端な例かもしれませんが、趣味を楽しみたい、癒しの空間にしたい、バスルームを豪華にしたいなど、居住空間へのニーズは非常に多様化しています。
一人ひとりの要望に応えることができるのがリノベーション
多様化というより、一人ひとり、異なった要望を持っているのではないでしょうか。そうした個人の要望に応えるのがリノベーションです。
たとえば間取りに関して、部屋を区切らずに開放的な広い空間で暮らしたいという人もいれば、料理が好きな人なら、キッチンは広くて機能的なものがいいという人もいます。それは決して住む人のわがままではないと思います。マイホームは高い買い物です。なら、もっともっと日本人は自分たちが住む空間に対してわがままになっていいと思います。
欧米のアパート(日本ではマンション)では、さすがに間取りを変えることはできませんが、賃貸であっても自由に壁の色を塗り替えたり、部屋を改装したりして、自分らしく住んでいます。
壁の色や部屋を改装したからといって大家さんに文句を言われることはありません。日本のマンションだって、本来はこうあるべきなのではないかと思います。業者のお仕着せの間取りで暮らすということは、ある意味、洋服に自分の体を合わせていることではないでしょうか。それは、自分でありながらも自分ではないような、すごく居心地が悪いことではないかと思います。
自分にとって居心地のいい住空間。そこに暮らすということは、ライフスタイルと同じように自分の個性を大切にして生きることです。趣味を楽しむ空間であったり、友達を呼んでホームパーティを開いたり、心が和む場所であったり……。つまり、住む人、一人ひとりのニーズに応える居住空間になっていないのが、日本のマンションの現状です。